MARK'S

【世界のギフトマナー】海外ビジネスに役立つ!ギフトエピソード by高橋克典【世界のギフトマナー】海外ビジネスに役立つ!ギフトエピソード by高橋克典

ギフト選びのNG週から相手の好みをリサーチするコツまで、グローバルに活躍するワーキングパーソンに役立つ情報満載。 外資系の社長を歴任し、海外暮らしを経験してきた筆者が、世界のギフトにまつわるエピソードをご紹介します。

Vol.3 意表をつくギフトで、相手との距離をぐっと縮める

初対面の相手への手土産には無難なものが安心ですが、気心が知れてきたら、サプライズ演出がその人との距離をぐっと縮めることもあります。ビジネスのお付き合いといえども、人間同士。ときにはユーモアや意外性も効果的です。ギフトにも、ちょっと大人の遊び心を取り入れてみてはいかがでしょうか?

Vol.3 意表をつくギフトで、相手との距離をぐっと縮める
著:高橋克典 / 編集 : 永岡綾 / イラスト: 菅濱奈里
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

一生の思い出となる、スペシャルなサプライズ

私が実際にいただいたサプライズギフトを時代順にご紹介しますね。まず、遡ること20年余り、1994年のパリ。元々オートクチュールからはじまり、今では世界的な香水ブランドとなっているROCHAS(ロシャス)社の社長から「今日は高橋さんが当社に長年貢献してくれたお礼に、3つのプレゼントを用意しました」と切り出されました。

「一つ目は、パリから車で1時間半ほどのところにある我が家に来てもらい、昼食を共にした後、午後は僕の馬に乗って半日間の乗馬を楽しんでもらうこと。二つ目は、当社がバカラ社に特別に注文してつくらせたワインのカラフェ。そして最後は、あなたが生まれた年に瓶詰めされたワイン。1957年製です」

長く生きていますが、こんなギフトは最初で最後です! もちろん一生の思い出になったのは言うまでもありません。でも今だから告白しますが、乗馬は、まったく経験のない私にとってはとてもシンドイものでした(笑)

ギクッとさせてから、喜ばせるギフト

もう一つは、一撃を食らわされて、それが喜びに変わる、というギフトです。時代はずっと最近になり、2013年の春でした。ドイツの調理器具メーカーであるWMF(ヴェーエムエフ)社に日本の取引先の方をお連れした際、ミーティングが終わって席を立とうしたところ、「お持ち帰りいただきたい手土産がありますから、少々ここでお待ちください」と営業担当者に言われました。ほどなくして、大きなシャンパンクーラー(シャンパンのボトルが2本ゆったりと入るステンレス製もの)と、鉄製の、これまた大きなフライパンを、アシスタントがそれぞれ2つずつ持ってやってくるではありませんか。

日本企業の社長さん、「高橋さん、私はだんだん嫌な予感がしてきましたよ。あんなにデカくて、重いもの、スーツケースにも入らないし、持って帰れって言うんでしょうかねえ?」と、私の耳元で不安そうに言われました。もちろん私もまったく同じ気持ちで、その特大でヘビー級の"手土産"が近づいてくるのを呆然と眺めていました。

「さあ、当社から心を込めてお二人に贈ります! どうか日本までお持ち帰りください!」と言われ、「......はあ、Thank you......」と歯切れの悪い我々。

そこへWMF社の副社長が現れて「ハッハッハ! ごめんなさい! ジョークです。次の便でお送りしますから、ご心配なく!」と種明かし。ほっと、胸をなでおろしました。一時は、私が取引先の分も合わせて4つのかさばる重いお土産を抱えて成田まで帰らなければならないかと心配してしまいましたから。

サプライズには、サプライズでお返しを !?

実は先述のWMF社の副社長、大のワイン好きなのですが、来日時に日本酒をたくさん飲んだ結果、ひどい二日酔いになった経験を持っていました。それがトラウマになって、以降日本酒は一切口にしなくなっていたのです。そこで彼が後日来日した折、帰国前日に、和紙できれいに包装された箱入りの酒瓶を1本手渡しました。「これ、僕からの贈りもの、Japanese Wine! ラッピングが美しいので、今開けずにお家に帰ってから奥さまと一緒に開けてくださいね」と言って渡したところ、一応"Thank you very much"と言いながらも、ちょっと顔が曇ってしまいました。

それから一週間ほどしてメールが入り、そこには「Japanese Wineって言うからてっきりSAKEかと思ったら、本当にワインだったんだね。美味しかったよ!」と。私は嘘はついていませんよ! 蛇足ですが、ユーモアが分かり合える相手とは、仕事を離れてもよき友人でいられるものです。

蓋を開けると......組み合わせの妙で驚きを演出

今度は、南フランスにあるREVOL(レヴォル)という磁器の調理器具メーカーからいただいた手土産のお話です。2015年の初夏、心地よい風が吹いている午後でした。会議が終了して取引先の社長と席を立とうとしたとき、「少々お待ちください。差し上げるものが......」と言われ、内心「小さくて軽いものがいいなあ」と思っていると、直径20cmの磁器製のかわいいお鍋を渡されました。「メルシー、これならスーツケースに入るし、ありがたいです」とお礼を言ったものの、大きさは手頃なんですが、磁器にしては少々重いかな?と若干訝りました。

ホテルに戻り、スーツケースに入れる前にそうっとラッピングを解いて蓋を開けてみると、なんと鍋の中には色とりどりのチョコレートがぎっしりと入っていたのです。早速いくつか摘んで食べてみましたが、地元のショコラティエがつくった手づくりチョコレートは実に美味でした。

中にものが入れられるギフトの場合、このように本来の目的ではないものを詰めて贈るとサプライズがプラスされる、という一例でした。それが地元でしか手に入らないものだったりすると、受け取ったほうの喜びもひとしおです。

忘れられないギフトにするために

記憶に深く刻まれる忘れられないギフトとは、カスタマイズされたものです。冒頭の「特注のワインカラフェ」のように、特別にあつらえたものもその一つ。また、製品に相手の名前を入れることができれば贈られた人はいつまでも大切に使ってくれるでしょうし、贈った人のことも忘れません。

とはいえ、ギフトにおける「カスタマイズ」は、特注や名入れとは限りません。相手のことを知り、その人にとって価値あるものを選んで贈ることがいちばんのカスタマイズです。たとえば、贈る相手のメモリアルなイベント、誕生、結婚や出産、あるいは学校を卒業した年に関連のある品は感動を呼びます。生まれ年のワインや、結婚した年のイヤープレートなどですね。見つけることは容易ではありませんが、それだけ印象深いギフトになることは間違いありません。

あるいは、相手の年代を考慮して歴史的なイベントや当時のトピックスに関連するものを選ぶのも、よいサプライズになります。スポーツ好きならオリンピックイヤーやワールドカップ、芸術好きなら数年に一度のアートイベントなど。これは日本の知人へのギフトの例ですが、画家の岡本太郎氏を愛してやまないその人に、かつて大流行した「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」というCMに登場したウイスキーグラスをアンティークショップで見つけて差し上げたところ、涙を流さんばかりに感激されました。

最後に、もっとシンプルな方法としてご紹介するのは、贈る相手が以前暮らしていた土地の産品を差し上げる、というものです。私も7年間ポーランドに暮らしていた知人に、ポーランド産のビールを贈ったところ「懐かしい味!」と、とても喜んでもらいました。これなら難しくありませんよね。

サプライズは、信頼関係が結ばれてから

ビジネスの世界で相手にサプライズを仕掛けて効果的なのは、ある程度仕事を一緒にしてきた相手、つまりすでに信頼関係で結ばれている人です。初対面の人をいきなり驚かさないようご注意を。そして、よく知った相手だとしても、宗教、信条や習慣などへのご配慮はお忘れなく!

高橋克典

高橋克典Katsunori Takahashi

1957年生まれ。シャルル・ジョルダン、カッシーナイクスシー、WMFジャパン コンシューマーグッズなど、海外企業の子会社や日本法人の社長を歴任。ヨーロッパを中心に世界各国とのビジネスを経験し、またフランス在住経験を持つ。現在は、企業のコンサルティングをしながら、講演や執筆活動にも力を入れている。著書に『海外VIP1000人を感動させた外資系企業社長の「おもてなし」術』『小さな会社のはじめてのブランドの教科書』(ダイヤモンド社)など。