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【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子

ギフト文化は、各国の歴史や習慣とともに育まれるもの。 それだけに、ギフトにまつわるマナーにもお国柄が色濃く反映されます。 プロトコール(国際交流のルール)に精通する筆者が、ギフトの習慣やタブーを国別に解説します。

【韓国編】100日記念のかわいいギフト

古代から日本に多大な文化的影響をもたらしてきた韓国。同じ文化の源を共有してきたのに、今や、まったく違う精神的風土を持つ国となりました。美やステータスに強い憧れを持ち、エネルギッシュに生き抜こうとしている半面、歴史や古い慣習に敬意を払い、礼節を重んじる韓国人。だからこそ、私たち日本人も韓国人が培ってきた奥深い文化土壌に心を動かされるのでしょう。どんなギフト事情なのか、掘り起こしてみたくなりますね。

【韓国編】100日記念の可愛いギフト
著者:石橋眞知子 / 編集:永岡 綾 / イラスト:坂本朝香
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

Q. どんなときにギフトを贈る?

100日記念日、「ペギル」

韓国では、誕生日やクリスマスなどのイベントはもちろん、ギフトのやりとりは日常茶飯事。日本にないギフトの機会も多々あります。筆頭は、「ペギル」と呼ばれる100日記念日。赤ちゃんが誕生して、カップルが出会って、結婚して。それぞれ、100日目をお祝いする習わしがあります。そう言えば、街を歩いていて目に入るのが「100日記念○○」。デパートやお店、遊園地などの施設でも、開店100日目にはセールやお祝いを行うようです。

ペギルの中でも伝統的なのが、生誕100日目のお祝い。親戚や知人を招いて、子どもの健康と成長を祈りながら食卓を囲みます。料理のほかに必ず出されるのが、真っ白なお餅「ペクソルギ」。 文字通り、「雪のように白い(ペク)餅(ソルギ)」には、純潔と神聖、そして成長祈願の意味が込めてられているようです。韓国のお餅はうるち米粉でできていて、お祝いごとになるとその意味に合った餅菓子が供されます。

また、赤ちゃんのためにたくさんのギフトが用意されますが、最も価値があるのが 「ペギルパンジ」という24金の指輪。赤ちゃんサイズなのでとても小さくて可愛い。祖父母や親戚がこれからの人生でいつか役に立つことを祈って贈るのです。ちなみに、韓国では、人生の節目に指輪を贈ることが定番化しています。1歳の記念日にも「トルパンジ」と呼ばれる24金の指輪を贈りますし、卒業、婚約、結婚、還暦などの人生の記念日にも指輪は欠かせないアイテムなのです。

カップルにとっての「ペギル」とは

一方、カップルにとっての100日目も大切な記念日。日本のクリスマスデートのように、豪華な食事をしてギフトを交換し合うのがお決まりパターンではありますが、二人ならではの100日記念として、旅行に出かけたり遊園地に行ったりと特別な思い出づくりに勤しむカップルも多いとか。

最近韓国人の女性とのお付き合いが始まったという日本人男性。「一番怖いのは100日目を忘れちゃうことかな。万が一忘れたら、鉄拳が来るかも」と笑いながら、便利なアプリについて教えてくれました。付き合ってからの日数を正確に教えてくれるというもの。韓国の若者ならだれもがスマホにダウンロードしているくらい人気アプリとなっているそうです。

「100日目には、100本のバラを贈るつもりです」と彼は断言しました。100日ごとにお祝いするので、200日目、300日目と、長く付き合えば付き合うほど100日記念日が繰り返される模様。 彼はそのたびに200本、300本とバラを増やしていくのかしら......他人事ながらお財布事情が心配になりました。

やがて恋人同士がゴールインしたら。結婚した日から100日目も、重要な記念日としてお祝いします。結婚記念日と同様に大切な日なのですね。

結婚式のご祝儀事情

人生の中で最も大きなイベントの一つが結婚式です。結婚のご祝儀は、友人なら30000ウォンまたは50000ウォン(日本円で3000円/5000円程度)が相場と言われていますが、もちろん親しさの度合いによってもっと多く包む人もいます。一応、偶数は避けて奇数の金額にしたほうが無難なよう。日本のような豪華な祝儀袋はなく、シンプルな白い袋に入れて受付で渡すか、二人の口座にあらかじめ振り込むのもOKです。現金を扱わないので窃盗の心配もないし、そのまま口座に名前が記帳されるし、合理的でいい方法かもしれません。

そうそう、もし韓国で結婚披露宴に列席する機会があったら気をつけてほしいことがあります。絶対に目立たない服装にすること。明るい色のドレスはタブー。黒がベストカラーです。花嫁を引き立てるための配慮なのですね。確かに韓国の結婚披露宴の集合写真を調べてみると、どれも新郎新婦の周りは黒が中心の地味なドレスのオンパレードでした。

Q. ギフト文化の特徴は?

韓国では、「ソルラル」と「チュソク(秋夕)」の二大名節が、ギフトのシーズンでもあります。ソルラルとは、旧正月、旧暦1月1日のこと。チュソクは旧暦8月15日です。

どちらもその前後2日間が休みとなり、3連休を満喫しようと、ほとんどの人が家族や親戚とともに過ごすため帰省します。その帰省に合わせて賑わうのがギフト市場。日頃お世話になっている人たちのために買い物に走ります。大型デパートやスーパーには特設会場が設置され、ありとあらゆる品物が展示されます。

たとえば、韓牛、ハム、干し魚、果物、焼き菓子などの食品や、シャンプー、石鹸、歯磨きなどの日用品のほか、高齢者用に高麗人参や蜂蜜などの健康食品も好評のようです。なお、近年チュソクギフト市場で最も人気があるのがスパム缶詰だそう。1950年代初めの朝鮮戦争のときに米軍基地から流出したのがきっかけで、高級品の位置づけで売られているようです。この時期、店頭や郵便局には発送を待つ大きな包みが山積みされ、両手いっぱいの包装箱を抱えた人たちが行き交います。義理と人情に厚い国だからこそ見られる季節の風物詩ですね。このあたりは、日本のお歳暮やお中元と共通するところがありますね。

Q. ギフト選びのポイントは?

出会いと始まりを重んじて「記念日」を大切にする韓国人は、常日頃からその縁を円滑に運ぶため、感謝の心を表す贈り物を交わすことが多いようです。恋人には花束がいちばん人気。デートのたびに男性が女性に一輪でもプレゼントするのが愛情の証だとか。いつでも手に入るようにと、街角には生花やドライフラワーの自販機まで登場しています。

また、家に遊びに行くときには必ず何か持参するのが暗黙のルール。「長年の定番ギフトは、オレンジジュース6本パックです」と教えてくれたのは日本の大学院に留学中の韓国人女性。「もちろんお酒好きにはお酒がぴったりですが、昨今健康ブームになってからは、栄養ドリンク10本パックが喜ばれます。朝鮮人参や高麗人参エキスは高いけれど高齢者のお宅には必ず持っていきます」と解説してくれました。 ただし、ブームに沿わないお菓子やコーラはご法度だそうです。

Q. 気をつけたいギフトのマナー&タブーは?

数字にこだわるのは、韓国人の特徴のひとつです。7は「ラッキーセブン」としてとても好まれますが、反面、四はサと発音され、「死(サ)」と同じ音なのでは嫌がられます。日本の「四」から「死」が連想されるのと同じニュアンスですね。また韓国人の30%近くがキリスト教徒ゆえ、13と並んで6は不吉の数字として忌み嫌われます。特に新約聖書のヨハネの黙示録にある獣を意味する数字として、666は悪魔の数字として不吉の象徴のようです。

また、ギフトとしてタブーとされるのは、ハンカチと白いユリ、そして靴。日本ではハンカチは便利なプレゼントとして親しまれていますが、韓国では涙をぬぐうためのもの。別れや悲しみを暗示するために避けるようです。また白いユリはキリスト教式葬儀では、死者に捧げる献花として使用されるため、ギフトには向きません。靴も、お隣の中国と同様、恋人には贈りません。その靴を履いて違う相手のところに逃げて行ってしまうのでは、という懸念からだそうです。

Q. ラッピングはどうしたらいい?

日本より紙代が高い韓国では、基本的にプレゼント用の包装紙は有料です。デパートでも簡単なラッピングは無料で請け負いますが、紙袋は有料。素敵なラッピングをしてもらいたいときは「ラッピングサービスコーナー」にて有料で頼みます。ここでは、そのデパート以外で買ったものでも受け付けてくれます。カラフルなペーパーやリボンがそろっていますが、日本より数倍高いことを覚悟しなければなりません。ソウルに滞在するたびに贈答シーンを見かけましたが、日本のように丁寧にくるまれたものよりも、ボックスごと渡している風景を目にしました。あらかじめ装飾されているボックスは、包装紙を破らずとも簡単に開けられるようになっているのです。

さて、プレゼントをいつ開けるかというのはお国柄によってさまざまですが、以前と違って韓国では受け取ってすぐ開けるのが一般的になりました。そういう意味でも、ボックスだけのラッピングは、便利だし無駄がないのかもしれませんね。贈った人と贈られた人が一つのギフトを通して共感しあう瞬間。「わあ、素敵!」とにこやかな表情で嬉々とした声を上げる人がいると思えば、「これ? 好きじゃない」とキッとした固い表情でつぶやく人も。贈った人の気持ちよりも自分が好きか嫌いかを優先するストレートなところもあるのです。

ここで、韓国の人にギフトを手渡すときのマナーを一つ覚えましょう。それは、必ず両手で渡すということ。たとえ片手で持てるギフトであっても、もう一方の手を添えて差し出すことが基本的なマナーとなっています。

Q. 最近のギフトトレンドは?

ここ数年盛んなのが「ソーシャルギフト」。インターネットを通して日常的に小さな贈り物をし合うシステムです。日本ではまだ定着していませんが、韓国では利用率が3割を超え、世界のどの国に比べてもすこぶる大きなマーケットになっています。

まず贈り主がソーシャルギフトサービスにアクセスしてギフトを購入し、贈る相手にメールやSNSでメッセージを送信します。贈られた相手はスマホの画面から受け取れるという簡便さが魅力になっています。直接会って渡す手間が省けるし、相手の住所がわからなくても贈れるし、またSNSならば複数で共同購入して贈ることもできます。韓国では、 'Gift Smart' や 'Gifticon' などが人気を博しています。また韓国一のメッセンジャーサービス 'Kakao Talk' もソーシャルギフトサービスで大きな売り上げを上げているよう。日本市場にも参入してきましたが、果たして日本でも韓国並みにこのシステムが生かされるでしょうか?

石橋眞知子

石橋眞知子Machiko Ishibashi

学習院大学卒業。在学中よりラジオパーソナリティやテレビレポーターとして活躍。その後、アメリカ・ノースウエスタン大学で日本語教師をし、イギリス・オックスフォード大学で美術史や演劇を学ぶ。以来、異文化コミュニケーションやマナーのレクチャー、企業のコンサルテーションなど幅広く活動。英会話に関する著書多数。2006年には「プロトコールの基本」(日本ホテル教育センター)の監修プロデュースを手がけた。2015年に日本クロスカルチュラルコミュニケーション協会を設立し、現在会長を務める。