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【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子

ギフト文化は、各国の歴史や習慣とともに育まれるもの。 それだけに、ギフトにまつわるマナーにもお国柄が色濃く反映されます。 プロトコール(国際交流のルール)に精通する筆者が、ギフトの習慣やタブーを国別に解説します。

【アメリカ編】ギフトで伝える、感謝の気持ち

アメリカ人は、ホームパーティが大好き。私自身、アメリカ滞在中は何度も友人たちが開くホームパーティの醍醐味を味わいました。誕生日をはじめ、転職、引越し、リフォームなどのメインイベントはもちろん、ほんの小さな生活の変化も見逃さず、すぐさまパーティを開くのです。招待客は、そのたびにお金をかけない真心ギフトを持参します。たとえば、手づくりジャムやケーキ、はたまた庭先から摘んできたバラの花や家にあるワインを携え、その場を盛り上げます。こうした日ごろからの「人と人との和やかな関係」が、アメリカの一般社会を円滑にしているのだとつくづく実感したものです。

【アメリカ編】ギフトで伝える、感謝の気持ち
著 : 石橋眞知子 / 編集:永岡綾 / イラスト:坂本朝香
※掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

Q. どんなときにギフトを贈る?

アメリカのギフトシーンにおける一大行事は、何と言ってもクリスマス。キリスト教徒が多いこともあり、12月にはどの町もクリスマスムードに。家族や友人たちには必ず心を込めたギフトを贈ります。ただ、多民族で構成されているアメリカには、クリスマスを祝わない家庭もあります。たとえば、ユダヤ教徒が祝うのは「ハヌカ」。別名「光の祭典」と呼ばれるお祭りで、ユダヤの暦にもとづいて12月ごろに行われます。キャンドルを8本立てる燭台「メノラー」が置かれ、ドーナツやポテトパンケーキを食してお祝いします。子どもたちにギフトを贈る家庭もあるそう。

クリスマスカラーが緑と赤なら、ハヌカカラーは青と白。2012年、ユダヤ人の多いニューヨークにて、エンパイアステートビルの照明が一面はクリスマスカラー、もう一面はハヌカカラーとなり話題を呼びました。この時期、「メリークリスマス!」のみならず「ハッピーホリデーズ!」をよく耳にするのもうなずけますね。

また、アメリカには感謝の気持ちを表す日がいくつかあります。代表的なのは、アメリカで端を発した「母の日」と「父の日」。「母の日」には日本でも定番の赤いカーネーションを母親に、そして「父の日」には白いバラを父親に贈るのが一般的です。ユニークなのが4月最終水曜日の「セクレタリーデー」、10月16日の「ボスデー」。仕事場で、ボスから秘書へ、秘書からボスへギフトを贈る習慣です。いずれも一番人気はランチをご馳走することだとか。日本のオフィスでも取り入れてみていはいかがでしょう?

Q. ギフト文化の特徴は?

アメリカならではの風習に「ギフトレシート」があります。買い物をしたときに「贈り物です」と伝えると、店員さんが値段の入っていないレシートを入れてくれます。渡すときは、このレシートも一緒につけて。受け取った人が万が一気に入らなかった場合、そのお店に持ち込んで、ほかの商品と交換したり、返品したりできるというわけ。極めて合理的な考え方ですが、相手のことを考えながら選び抜いた贈り手としては、ちょっぴり寂しい気持ちになりますね......。

もう一つ、アメリカらしいギフトの贈り方に「ギフトレジストリー」があります。ギフトを受け取る人が欲しいものをリスト化し、贈る人がそこから予算に見合ったものを選ぶ、というシステム。日本でも結婚祝い(ウェディングレジストリー)や出産祝い(ベビーレジストリー)などは見かけるようになりました。それが、子供の誕生日祝いや祖父母の記念日祝いなどにも広がっているのです。ここ数年人気が高まっているのは、デパートや大型専門店のウェブサイトでのレジストリー。受け取り手が「欲しいものリスト」を登録すると、友人たちが検索してそのままオンラインで注文可能。足を運ばすどこからでも贈れる便利なシステムです。日本でも人気が出るかもしれませんね。

Q. ギフト選びのポイントは?

ギフトレジストリーの風習からも分かるように、人生の大きな門出に贈るギフトは、贈る相手に何が欲しいのかを予め聞いておくのが通常です。一方、カジュアルな集まりに持参するギフトには、高価なものは不似合いです。手づくりデザートやチョコレート、ちょっとしたブーケやリーズナブルなワインなど、テーブルを飾る気軽なアイテムがぴったり。先日アメリカ人宅に招かれたパーティで一番人気だったのは、手づくりポプリでした。お花をいただくたびにドライフラワーにしてポプリをつくったという女性。「せっかくのお花を二度楽しめるでしょ」と楽しげに話していました。

Q. 気をつけたいギフトのマナー&タブーは?

アメリカでは、絶対的なタブーはありません。ただし、多彩な人種や民族が集まってできた国なので、たとえばユダヤ教徒へ贈るカードに「メリークリスマス」とは書かないなど、それぞれの宗教には配慮するのがマナーです。一方、アメリカ人にとって大切なのは、ギフトをいただいたときに目の前で開けて感謝の意を表すこと。かつての日本人のように「お客様の前では開けない」なんていうのは、逆に失礼に当たります。贈った人と贈られた人とが、その場でうれしさを共有することがポイントなのですね。

Q. ラッピングはどうしたらいい?

日本のように、買い物をしたときにギフト用のボックスやラッピングをサービスしてくれるお店はほとんど見当たりません。そこで、ラッピングはDIYが当たり前。ギフトは自分で包装しなければなりません。12月になると、DIYショップのラッピングペーパーコーナーは大混雑。緑や赤の絵柄がほどこされたクリスマス用のペーパーが飛ぶように売れていきます。ところが、包むテクニックの乏しさからか、アメリカ人の包んだギフトは、日本人から見るとグチャグチャの状態......。日本では不器用で通っている私が包んだものでさえ、アメリカ人の友人たちから "Beautiful!"と褒められたほど。日本との落差に、喜ぶよりも驚いたのを覚えています。

包むことがとにかく苦手なアメリカ人。彼らが生み出したお手軽なラッピングテクニックは、「薄紙」を使うこと。カラフルな薄紙で無造作に巻いたギフトを素敵な紙袋に入れて手渡すのです。薄紙ならどんなに曲がっていてもクシャクシャでも平気。なかなかスマートなアイデアですね。

こうして、不器用ながらもがんばってラッピングをするアメリカ人。でも、多くの人は受け取った途端に無造作にビリビリッと破いてしまいます。包装紙もギフトの一部として扱い、きれいにはがしてたたむ日本人とは大違い。アメリカ人にとって、ギフトはあくまで中身。ラッピングは相手に届ける役目を果たせばそれで終わり、ということのようです。

Q. 最近のギフトトレンドは?

以前は、形あるものをギフトに選ぶことが多かったアメリカ人。ところが、ここ数年「ギフトカード」や「プリペイドカード」が人気を集めています。子どもたちへのギフトも、幼いうちはおもちゃが喜ばれるものの、大きくなるにつれ、本やゲーム用のギフトカードが好まれると言います。カードには、アパレルショップや飲食店で使えるものから、モバイルフォンなどの通信系、大手カード会社によるものまであり、さまざまなギフトカードが市場を賑わせています。

たとえば、アメリカの小学校では、学期が終わるごとに学校の先生やスクールバスのドライバーに生徒からお礼のギフトを渡すことがよくあるのですが、「ギフトカードにして以来、頭を悩まさずに済むようになりました」とはニューヨーク近郊に住む一児のママの弁。今やスーパーやコンビニのレジの横には必ずと言っていいほど多彩なギフトカードが並んでおり、ギフト選びに悩む人たちの一助になっているのです。

さて、このギフトカード人気で「クリスマス商戦が変わった」と流通業の人がコメントしています。ギフトカード市場が大きくなればなるほど、カードを使ってのショッピングがポストクリスマス(クリスマス後)にずれ込みます。クリスマスに集中していた商戦のピークが、1〜2月へと分散することになっているようです。

石橋眞知子

石橋眞知子Machiko Ishibashi

学習院大学卒業。在学中よりラジオパーソナリティやテレビレポーターとして活躍。その後、アメリカ・ノースウエスタン大学で日本語教師をし、イギリス・オックスフォード大学で美術史や演劇を学ぶ。以来、異文化コミュニケーションやマナーのレクチャー、企業のコンサルテーションなど幅広く活動。英会話に関する著書多数。2006年には「プロトコールの基本」(日本ホテル教育センター)の監修プロデュースを手がけた。2015年に日本クロスカルチュラルコミュニケーション協会を設立し、現在会長を務める。